「買わない」ことで「すべて」を手に入れる、という逆説
著者の稲垣えみ子氏は、50歳で会社を辞めたことをきっかけに「買わない生活」を始めたそうです。シャンプーも歯磨き粉も使わず、服は10着だけ、食事はフレンチより一汁一菜100円飯を愛する──。聞いただけでは、「我慢の生活なのでは?」と、正直、私も最初は思いました。
しかし、この本を読み進めると、その考えが大きく変わります。稲垣氏は「買わないことで、すべてを手に入れたのだ」と語ります。おしゃれな服、美味しい食事、快適な家、健康、友達、自由な時間、お金まで。かつて買いまくっていた時代には決して満足に手に入らなかったものが、「買わない」ことで次々と転がり込んできたというのです。これには私も深く考えさせられました。私たちの日常にも、同じような視点の転換はたくさんあるのではないでしょうか?
「狭い家」も捉えなおせば「豪邸」に
稲垣氏の「買わない生活」は、単なる節約術ではありません。モノとの関係性、そして社会とのつながり方そのものを問い直す、まさに「生活革命」と呼べるかもしれません。
例えば、「服」の考え方。町の古着屋さんを自分のクローゼットと捉える。必要なときに買い、着なくなったら売る。これなら、家に服を抱え込む必要もありませんし、常に新しいファッションを楽しむことも可能です。私も昔はクローゼットがいっぱいになって困っていたものですから、この発想には目から鱗が落ちる思いでした。
さらに驚くのは、「わが家の機能を町全体に解き放つ」という考え方です。近所のカフェを書斎と考えれば、いつでも淹れたての美味しいコーヒーが楽しめる「超豪邸」に住んでいるのと同じだと。これは本当に素敵な発想ですよね。私も行きつけのカフェを「第二の書斎」と呼んでみようかな、なんて思ってしまいました。

世界一安くて「我慢しない」健康法とは?
健康についても、稲垣氏は独自の視点を示しています。最新の栄養学や治療法に頼るのではなく、最終的な結論は「規則正しい生活」「健康的な食事」「適度な運動」の3点セットに行き着く、と。そして、「買わない生活」を始めた結果、いやも応もなくこの3点セットを完璧に実行するようになったというのです。
健康のためにあれこれ買ったり、情報に振り回されたりしがちな私たちにとって、これは非常に示唆に富む話ではないでしょうか。きっと、本当に大切なことは、意外とシンプルなところにあるのかもしれませんね。
「ポイ活」を捨てたら、別のおトクがついてきた
最近流行りの「ポイ活」も、稲垣氏は手放したそうです。しかし、その代わりに「買い物ついでにもれなく人間関係がついてくること」を「おトク」と捉えるようになりました。店の人や生産者とつながり、知り合いが増えることこそが真の「おトク」だと。割引だけで友達がついてこない買い物を「めちゃくちゃ損してるじゃん!」と表現する稲垣氏の言葉には、思わずクスリと笑ってしまいました。

モノを買うことだけが豊かさではない、人間関係という目に見えない財産の大切さを改めて教えてくれる一節です。私も、日々の買い物で、もっとお店の方との会話を楽しんでみようかな、と思います。
本書の目次から見る「買わない生活」の全貌
本書は、以下の目次で構成されており、多岐にわたるテーマで「買わない生活」の哲学が語られています。
- 「100円飯」がフレンチより幸せという革命
- 「買わない生活」と「キラキラ」の悩ましい関係
- コスメよ永遠にさようなら
- 「町がわが家」という脳内革命
- 光熱費ほぼゼロで生きる
- お金が健康を遠ざける
- 「ポイ活」をやめたら「お得」なことばかり
- 「もらって暮らす」という最強の生き方
- お金という一神教を脱出する方法
- エコライフという貴族生活
- どんな人も確実に「お金持ち」になれる方法
- 「お金を使わない私」が「お金を稼ぐ」意味
著者プロフィール
稲垣 えみ子(いながき えみこ)氏
1965年、愛知県生まれ。朝日新聞社で大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員を務め、2016年に50歳で退社。以来、都内で夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活を送る。『魂の退社』、『もうレシピ本はいらない』(第5回料理レシピ本大賞料理部門エッセイ賞受賞)、『一人飲みで生きていく』、『老後とピアノ』、『家事か地獄か』など著書多数。
書籍情報
-
タイトル: 『買わない生活』
-
著者: 稲垣 えみ子
-
定価: 1,980円(税込)
-
発売日: 2026年7月29日
-
ISBN: 978-4-492-04836-8
-
体裁: 四六判/並製/400ページ
-
発行元: 株式会社東洋経済新報社
購入はこちらから
編集長 KENSAKU からの一言
この『買わない生活』は、単なる節約術やミニマリズムの指南書ではありません。不安の時代を生き抜くための、心の持ち方や生き方のヒントが詰まった、まさに「最強のライフスタイルエッセイ」だと感じました。
「買わない」という選択が、私たちにどれほどの自由と豊かさをもたらしてくれるのか。この本を読んで、皆さんも一緒に、自分にとっての「真の幸せ」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
編集長 KENSAKU


