PR

「住まいを選び直す自由」の壁とは?日本の不動産取引の「重さ」をPropTechがどう変えるか、清水千弘所長が解説

編集長Kensakuの注目ネタ
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク
スポンサーリンク

取引の「重さ」を生む構造

一つの物件が動く時、どれだけ多くの人が関わっているか、想像してみてください。売り主、買い主、それぞれの仲介業者、銀行、火災保険会社、司法書士、土地家屋調査士、管理組合、引越し業者、税理士、時には弁護士まで……。本当にたくさんの関係者が登場しますよね。
それぞれが独自の書類フォーマットを持ち、独自の審査基準を持ち、独自のタイムラインで動いています。買い主は、仕事の合間に役所を回り、書類を集め、銀行に提出し、また追加資料を求められて役所へ……。決済日には、銀行の応接室に多くの関係者が集まり、書類への押印、ローンの実行、登記移転、鍵の引き渡しが、まるで儀式のように進んでいく。この一連のプロセスを、多くの日本人は人生で1~2回しか経験しないのです。
「これはまるで、情報の探偵になった気分ですね」と、私も記事を読んでいて思わず膝を打ちました。
これに対してアメリカでは、エスクロー会社という第三者機関が取引の中心に立ちます。買い主は契約後、エスクロー口座にお金を預け、必要書類はすべてエスクロー会社に集約されるため、売り主と買い主が同じ部屋に集まる必要すらないのです。Title insurance(権原保険)が登記の連続性を保証し、リフォーム履歴はホームインスペクション報告書として標準化される。意思決定に必要な情報は、買い主が自宅のソファでスマートフォンを見ながら確認できる、というから驚きです。

情報の分断と非対称性

家を買うという行為は、突き詰めれば「情報を集めて判断すること」に他なりません。立地、間取り、建物の状態、近隣の環境、学区、災害リスク、価格相場、ローンの組み方、税制優遇、将来の資産価値……。これらを統合し、自身のライフプランと照らし合わせて決断するわけですが、日本ではこの情報収集が非常に非効率です。
例えば、物件情報。不動産業者向けのデータベース「レインズ」はありますが、消費者は直接アクセスできません。SUUMOやLIFULL HOME’Sといったポータルサイトの情報は、各仲介業者が個別に登録した重複情報の山であり、整理されているとは言いがたい状況です。同じ物件が複数の業者から異なる写真や説明文で掲載され、価格にばらつきがあることも珍しくありません。「囲い込み」といった慣習も、いまだに業界の構造的な問題として残っていると聞きます。
「これでは、本当に自分に合った物件を見つけ出すのが至難の業ですよね」と、私自身も感じてしまいます。
アメリカではMLS(Multiple Listing Service)という業界共通のデータベースが整備され、消費者向けにも基本的な情報が公開されています。Zillowはこの公開情報の上に、独自の価格推定モデル「Zestimate」を乗せて成長しました。Zestimateの精度は、市場に出ている物件で全国中央値誤差率1.74%、市場に出ていない物件で7.20%と公表されており、これはAI査定の可能性を示すと同時に、データ環境の重要性を示唆しています。AIの限界は、市場制度の限界でもあるという指摘は非常に示唆に富んでいると感じますね。
価格情報だけでなく、建物の状態、リフォーム履歴、災害リスク、学区情報、税情報など、あらゆる情報が縦割りになっています。買い主は、まるで情報の探偵のように、様々な機関を回り、情報を集めなければならないのです。
中古住宅市場における「情報の非対称性」も大きな課題です。売り手のほうが買い手よりも物件の状態をよく知っているため、品質の良い中古品は市場に出にくく、市場には品質の悪いものばかりが残る「レモン市場」に陥る可能性があります。PropTechが最も貢献できる領域の一つは、まさにこの情報非対称性の縮小だと言えるでしょう。

制度と思想にみる日米英の差

国によって、不動産取引の制度思想は大きく異なります。

  • 米国: エスクロー、権原保険、MLS、ホームインスペクションの標準化など、情報・資金・登記・保険を制度的なインフラとして集約しています。個別の専門家の信頼に頼らず、制度が信頼を担保する仕組みです。

  • 英国: ソリシター(事務弁護士)が取引の中心に立ち、conveyancingと呼ばれるプロセスで権利移転を一括して扱います。専門職が厳格な職業倫理と保険制度で支えられ、信頼を制度化しています。

  • シンガポール: HDB(住宅開発庁)が公的住宅の8割を供給し、取引手続きも標準化されているという、国家による住宅市場のフォーマット化が進んだ事例です。

  • 日本: 仲介業者、司法書士、銀行、保険会社、管理会社が個別の信頼関係で連結されています。集約装置が明示的には存在せず、プロたちの「暗黙の協調」で取引が進む構造です。

清水所長は、「日本の取引の『重さ』は、信頼を制度ではなく人で担保する設計の必然的帰結である」と指摘しています。これは美しい慣習であると同時に、外部からの参入障壁も高く、消費者には取引の全体像が見えにくいという側面もあるのではないでしょうか。

なぜ「重さ」は温存されてきたのか?

これほど不便に感じられる仕組みが、なぜ何十年も温存されてきたのでしょうか。

  1. 取引頻度の低さ: 日本人は生涯に住宅を購入するのが1回程度と、取引頻度が低い傾向にあります。一生に一度しか経験しないからこそ、消費者は「比較する基準」を持たず、「住宅取引はそういうものだ」と受け入れてきた側面があるのかもしれません。初めての海外旅行で空港の行列に不満を覚える人が少ないように、それが「普通」だと感じてしまうのでしょうね。
  2. 業界の収益構造: 不動産業者の主な収入は、売買仲介手数料です。一件の取引が成立しなければ収益に繋がらないため、取引を「成立させる」ことに全エネルギーが注がれますが、「効率を上げる」ことには必ずしも熱心ではないという構造があります。手続きが複雑なほど、専門家としての価値が温存されるという側面も指摘されています。
  3. 規制と慣習の絡み合い: 宅建業法は長年、対面・書面・押印の世界を前提としてきました。2022年の改正で電磁的方法での提供が可能になったとはいえ、紙をPDFに置き換えるだけでは、真のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは言えません。誰が情報を持ち、誰がリスクを負い、誰が判断するのかを組み替えることが、本来のDXであると清水所長は述べています。
  4. 信頼の代替物としての機能: 対面での重要事項説明、押印、立会いのもとでの決済。これらの煩雑な儀式は、「これだけの手続きを経ているのだから間違いはない」という安心感を消費者に与えてきました。アメリカではエスクローや権原保険が制度的に信頼を担保しますが、日本ではプロたちの対面と紙の書類がその役割を担ってきたと言えるでしょう。テクノロジーで簡素化することは、この信頼装置を作り替えることでもあり、慎重な検討が必要だということですね。

「なるほど、単に古いから不便なのではなく、長年の慣習や信頼の形が複雑に絡み合っているのですね。これは一筋縄ではいかない問題だと感じます。」と、私 KENSAKUも深く考えさせられました。

テクノロジーは「重さ」の何を一番変えられるのか?

では、PropTech(不動産テック)は、この日本の不動産取引の「重さ」の何を一番変えることができるのでしょうか。
清水所長は、PropTechが貢献できる最大の領域は「情報非対称性の縮小」であると指摘しています。CarFaxのような中古車履歴データベースが情報非対称性を緩和したように、住宅履歴情報のインフラが整備されれば、中古住宅市場はもっと活性化するはずです。
また、AI査定の進化も大きな可能性を秘めています。しかし、AIの精度はAI自体の賢さだけでなく、市場にどれだけ取引があり、物件情報がどれだけ整備され、修繕履歴がどれだけ記録され、価格がどれだけ透明に形成されているかによって決まるとのこと。AIの限界は、市場制度の限界でもあるという視点は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。
「テクノロジーはあくまでツール。それを活かすも殺すも、私たち人間が作り上げる制度や仕組みにかかっているのですね」と、私は改めて感じました。
英国のソリシター制度のように、信頼を「個別の人間関係」から「制度化された専門職」へと移し替えるという選択肢も、日本が検討すべき方向性かもしれません。PropTechが日本の取引慣行を作り替えるとき、信頼をどこに移すのかという問いは、避けて通れない重要なテーマとなるでしょう。

不動産業界におけるAIの可能性、そして「短期・中期・長期」で訪れる劇的な変化については、プロパティ・テクノロジーズ 公式サイトのコラムでさらに詳しく解説されています。ぜひ、そちらもご覧になってみてください。


『PropTech-Lab(プロップテック・ラボ)』について

PropTech-Labロゴ
『PropTech-Lab』は、不動産市場に新たな価値をもたらし、人々が住まいを選ぶ際の新たな基準や簡便さ、価値観を醸成し、提供することを目指しています。市場のニーズに応え、価格高騰のスパイラルを抑制し、より多くの人々が質の高い住宅を手に入れられるよう努めています。

『PropTech-Lab』所長 清水 千弘 氏について

清水千弘氏のポートレート
一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センター・センター長。東京大学博士(環境学)。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授等を歴任されました。
2022年1月より株式会社property technologiesグループに参画し、社外取締役を経て、2024年7月より『PropTech-Lab』所長に就任されています。

株式会社property technologies(プロパティ・テクノロジーズ)について

「UNLOCK YOUR POSSIBILITIES. ~テクノロジーで人生の可能性を解き放つ~」というミッションを掲げ、年間36,000件超の不動産価格査定実績やグループ累計約15,000戸の不動産販売で培ったリアルな取引データ・ノウハウを背景に、「リアル(住まい)×テクノロジー」で実現する「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる未来に向け、手軽でお客様にとって利便性の高い不動産取引を提供している企業です。
株式会社property technologies 公式サイト

<会社概要>
会社名:株式会社property technologies
代表者:代表取締役社長 濱中 雄大
本社:東京都渋谷区本町3-12-1 住友不動産西新宿ビル6号館12階
設立:2020年11月16日
上場:東京証券取引所グロース市場(5527)

「いかがでしたでしょうか。日本の不動産取引の『重さ』は、単なる不便さだけでなく、長年の慣習や信頼の仕組み、さらには制度設計に深く根ざしていることが見えてきましたね。テクノロジーがこの『重さ』をどう変え、私たちに『住まいを選び直す自由』をもたらしてくれるのか、これからの動向に注目していきたいと、私 KENSAKUは強く感じています。皆さんも、ぜひこの機会に、ご自身の住まいに対する考え方を改めて見つめ直してみてはいかがでしょうか。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!」

ブログランキング

\ランキング参加中/
クリック応援お願いします!

人気サイト探すならブログランキングプラス FC2 ブログランキング ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキング

編集長Kensakuの注目ネタ
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
Kensakuをフォローする
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました